山口医院(神奈川県横浜市) 

医院建築をお考えの方へ

■医院建築の未来像/デザイン・コンセプト

2023.05.15

1.はじめに

 最近、設計した医院建築に関するお問い合せや新規のご相談を頂く機会が増えて参りました。同時に昨年、戸建の診療所が竣工した他、オフィスビルや医療モールに入るテナント事例、診療所併用住宅の事例など、様々な設計をする中で、医院建築に関する方向性も固まって参りました。
 そこで、このたび医院建築の現況分析、デザイン・コンセプトや事例の説明、ご質問・ご相談例の紹介など、医院建築に特化したページを開設し、引き続きご意見、ご相談頂きながら設計事務所としての専門性を高めて行ければと考えました。
 医院開業をお考えの方、医療施設の運用にお困りの方、専門的セカンドオピニオンをお求めの方に、是非ご一読頂ければ幸いです。

                       設計事例:山口医院(神奈川県横浜市)

2.無床診療所・クリニック・診療所併用住宅の現況分析
2-1.医療施設数と建設環境から見た現況



 令和3年1月現在、日本の医療施設の総数約18万の内訳は、病院の要件を満たす施設が約8千で全体の4%、残りは診療所が約10.2万施設、歯科診療所が約7万施設です。さらに診療所の約9.6万施設が病床を持たないことを考えると、歯科以外の疾患やケガを扱う約11万施設の約90%弱を、戸建やビル診といった無床診療所が占め、地域の「かかりつけ医療施設」として初期診療の窓口になっています。
 一方、こうした無床診療所には、診療所併用住宅や診療所単独の戸建、オフィスビルや医療モールに入居する所謂、ビル診など、様々なビルディングタイプがあるにもかかわらず、建築デザインが画一的であることは否めません。この理由としては、①製薬や住宅、医療機器メーカー等が連携して開業支援を請負う流れが常態化していること、②規制が厳しい都市部では、敷地面積や内装制限により動線や仕様が画一化し易いこと、③専門性を持ち、医師の医療理念に合った建築を提案できる設計事務所が少ないこと、などが挙げられます。

2-2.診療所の選択にデザイン性が重視される時代へ

 上記の現況に対して、コロナ禍はオンライン診療や発熱外来受け入れの可否など、診療所と地域社会の関係を多様化しました。そして、この多様化とは、単に業態による規模の大小だけでなく、画一的だった診療所建築そのものに変化を求めるものとなっています。
 例えば、訪問診療やオンライン診療に特化した診療所が増えれば小規模化が進み、都心の雑居ビルや、その反対に郊外住宅の1室がオフィスとなるケースも生じます。また、そのインテリアも従来の診療所とは全く違うものになります。医療モールでも、全戸を約150㎡/室とする必要はなく、オフィスビルのような様相であったり、旧来型との折衷案だったりとバリエーションの幅が広がると考えられます。
 こうした変化は、診察室を持った診療所建築にも起こり始めており、最も顕著なのは、コロナ禍の健康相談やワクチン接種を受ける診療所の選択にインターネットが多用されたことが挙げられます。このことで、地域に点在する診療所が再検討され、単に近さで選ばれる時代から施設としての充実度や入り易さなど、診療所建築のデザイン性が重視される時代へ移行しつつあります。

設計事例:山口医院(神奈川県横浜市)

3.診療所建築に関するデザイン・コンセプト

 現況分析を踏まえ、コロナ後の診療所建築に求められるデザイン条件について、地域との距離感や様々な世代が利用することへの配慮、建築技術の先進性など、『開かれた診療所』であることが重要と考えました。
以下、3つの方向から『開く』デザイン・コンセプトを提示します。
 

  設計事例では街並に面して一際奥行きの深い『木のワンルーム』を見通すガラスの大開口を設けました。内部は最大限木質化し、住宅と同等の質感とスケール感で地域の「セカンド・リビング」ともなる待合空間を提案しました。
 
 

写真左:垂木の連なりが建築の奥行きを強調する/右:2階のこども待合から外を見る


 
 この医院は、小児科と内科が併設することから、待合を2層化して小児と一般用を分離し、院内感染のリスクに配慮しました。同時に図書コーナーやおもちゃスペースがある「こども待合」を設けたことは、子連れで参加できる健診や講習会を開催できるなど、診療所活用の幅を広げることにもつながります。
 

写真:1階一般用待合。正面が受付カウンター

写真:2階こども待合。背面が絵本用の本棚・手前が保護者用の見守りソファー


 
 木造建築の医院は、外部を耐火構造の壁で囲い、内部に木を現す構成となっています。耐火構造の外壁は火災時の自立性能が問題になります。そこで、ここでは壁の頂部を鋼材でつなぐ独自の方法を考えました。同様に内装の制限も一つ一つ読み解き、規模や開口を調整することで対応し、都市の住宅街に木の温もりが感じられる空間を実現しました。
 
 
写真左:木質化されたエントランスの吹抜/右:2階天井垂木の連なり

■本建築で開発した木造耐火構造の資料

 上記概要に加えて、①テナント型診療所事例、②診療所併用住宅事例、③山口医院の詳細ページも設けました。本ページ最下段か、右上の『関連ページ移動バナー』をクリックして下さい。

4.ご質問・ご相談の類例

 よく頂くご質問・ご相談の類例をまとめましたのでご参照下さい。
また、敷地や入居先建物に関するお問い合せに関しては、例えば、敷地の地盤や地域特有の法関係、隣地との境界問題、入居先建物の設備状況や床レベルの問題など、基本情報だけでは判断できないことも多いので、まずは現場を拝見させて頂くのが最も近道だと考えます。
こうした作業には、労を惜しみませんので、お気軽にお声がけ下さい。

【類例1】Q :製薬メーカーや医療機器メーカーとの協働について
A:問題ありません。ご指定の医療機器メーカーの担当者と打合せて必要な寸法や配線、コンセント位置等を図面に反映します。また、施工現場でもX線室の内装や医療機器取付等のタイミングを情報共有して監理します。

【類例2】Q :設計・監理の内容について
A:意匠・構造・設備図など、建築に必要な図面一式を作成します。また、行政手続きについても、確認申請と検査手続きの他、医院建築特有の保健所対応や各地の福祉法にも対応します。施工現場では、最低週1回の定例会を設けて詳細まで監理します。

【類例3】Q :対応可能な構造について
A:木造、鉄骨造、RC造、混構造のいずれにも対応可能です。また、新築や増改築、リノベーションにも対応します。

【類例4】Q :工務店、建設会社の紹介と見積りについて
A:対応します。建設業界の状況から判断して無理がない工期や予算の場合は原則、2~3社の相見積もりを取ります。もちろん見積り先の工務店や建設会社も十分な技量があるところを見定めて紹介します。また、工期や予算規模が厳しい場合は信頼できる1社に絞って、設計の初期から価格調整を協働したり、当社による分割分離発注も検討します。

【類例5】Q :見積書の査定について
A:医院建築の見積り査定で注意すべき点の一つに材料や工事内容の重複があります。これは医療機器の設置やX線室の内装など、複数の医療メーカーが現場に入ることに起因し、よくある例として機器設置の配線工事費が工務店と医療機器メーカーの見積り、双方に算入されていることなどがあります。こうした経緯から見積書の査定に関しては、工務店だけでなく、医療機器やX線室の内装まで、全ての見積書をまとめて査定します。

【類例6】Q :設計事例の見学について
A:可能です。ご相談に応じます

5.最後に
和の医院建築

あそか眼科様のHPでご紹介頂きました。

■ウッドデザイン賞2022

林野庁主催の『ウッドデザイン賞2022』を受賞しました。

■コンテスト

AD CORE納入事例コンテストで大賞を受賞しました。

■Instagram

Instagramでより詳細な考え方などご参照頂けます。

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 最後までお読み頂きありがとうございました。
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