あそか眼科(埼玉県蕨市) 

■テナント型診療所のデザイン事例
事例1.あそか眼科 



■計画の概要
 埼玉県蕨市の医療モールにテナント入居されている事例です。約150㎡のスケルトンに視力検査スペース、手術室(+リカバリースペース)を含む眼科の診療所を計画しました。
 暗室化を要求される診察室、検査室、手術室の診療空間を大きな1ブロックにまとめ、これを固定した動線上の適切な場所に院長室やスタッフルーム、トイレといった個室を設定し、最後に残った隙間空間に暗室化や個室化を要さない受付や待合、視力検査スペースなどを配しました。
また、受付、待合、視力検査スペースの境界は、オリジナルの木格子で緩やかに区分し、連続性が感じられる開放的な空間を目指しました。
 

 
 診療所が地域に根付く一貫として、計画当初より受付+待合を活用した交流イベントや講習会を開催したいとのご要望を頂いていました。一方で、それぞれの境界を開放性の高い素材で分節して奥行感を出したいとの意識もあったことから、待合と視力検査スペースの境界の天井にロールスクリーンを組込みました。
 以下の添付写真の通り、普段は開放性の高い木格子で分節し、イベント時はロールスクリーンを降ろして受付+待合だけの利用ができます。
 

写真上:普段の状態。
    精密機器が多い検査スペースを避け、受付+待合だけの利用が求められた

写真下:イベント時の状態。
    視力検査スペースを隠すグレー地のスクリーンが天井に隠されている
 

 
 感染症リスクが小さい眼科診療所であることから、待合を年齢で分けるより、利用する一人一人が、自立してゆったりと安らげる空間デザインが重要と考えました。そこで、椅子はアームのついた幅が広めの一人掛けに統一し、待合空間全体は木格子や左官の壁、和紙の照明など、柔らかい材料を用いてデザインしました。また、柔らかい素材であるが故に、格子の端部や左官壁を塗る高さなどにも配慮し、デザインを壊さない程度に硬い材料で補強する工夫もしてあります。
 

写真上:和の医院建築。
    木格子やリシン掻き落し、和紙など、和の素材を盛り込んだ待合
 
写真下:待合内の照明、家具もオリジナルのデザイン
 

 
 インテリアを木質化する工芸的なデザインと、手術室のように精緻な作業を要する空間の両立に配慮しました。フットスイッチで開閉する手術室のドアや抗菌レベルの高い内装材等は、予算と合うまで数社と協議し、現場では施工要領の監理を徹底しました。
 
 
写真上:待合の木格子(左)と手術室に隣接するリカバリースペース(右)

写真下:手術室の内観

事例2.晴和ハートクリニック



■計画の概要
 豊島区大塚駅近くのテナントビルに入居する内科診療所です。工期的、経済的合理性から間仕切り壁を5種類に分けて部品化し、家具も工場製作とすることで、現場の造作を減らす工夫をしました。このことで限られた工期内で竣工すると同時に、空間の木質化も実現することができました。


 
 この診療所が入居するテナントビルは、JR山手線沿いにあり、線路側に開かれた横連窓は、線路を挟んだ反対側のビル群まで遮るものが無い広々とした眺望でした。そこで、待合と診察室前の中待合は、この横連窓沿いに設けることにしました。
 既存のブラインドを活かし、プラットホームに立つ人と直接目が合うことを避けながら、表出するビルの柱を待合の掲示板スペースや中待合の目隠し壁に使いました
 

写真上:最後尾の椅子の後ろは、掲示板スペースになっている
 
写真下:中待合の内観(左)柱部分は薄い模様のクロスを張ったデザイン(右)


 
 本診療所は循環器が専門であることから、受診者の多くが成人以上と想定され、特に高齢者へのバリアフリー対応に配慮しました。特にトイレは、既存の配管が、自動ドアの床レベルより10㎝以上高い位置でモルタルに埋められていたことから、壊して配管を大きく変えることは建物保全の点からも良くないと考えました。結果、自動ドアの床からスロープで上がる通路を設け、自走の車椅子で登れる勾配と通路幅を確保しました。
また、便器も1台にまとめ、トイレ前のパウダースペースで車椅子が旋回できる広さも確保しました。
 

写真上:ゆったり座れる一人掛けの椅子と柔らかな木で分節した待合
 
写真下:トイレに向かうスロープ通路(左)とトイレの内観
 

 
 工期短縮と経済性を考慮し、現場で施工する在来工法の壁を減らし、工場製作が可能な間仕切り壁をデザインしました。奥行感を出したい受付から待合に至る空間で木格子や天井より低い高さの障子戸を並べ、会話の音漏れが気になる診察室では防音性能が数値化されているスチールパーティションを用いました。また、院長室兼用の第二診察室は、柱間に防音材を充填した木製のパネルで壁を造って個室化しました。
 
 
写真上:左が木格子。右が診察室周りのスチールパーティション

写真中:受付背面の障子戸パーティション。内部は資料収納や事務スペース

写真下:第二診察室の内観。右が木製のパネルパーティション

上図:晴和ハートクリニックで考えたパーティションの種類と配置

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